■状態量とは?
状態 量とは、(温度と体積) 等の状態が決まれば,どういう経路でその状態になったかに無関係に決まる物理量のことです。じゃあ状態って何のことかというと、ズバリ「シリンダ内に気体が充満している状態」とだと割り切ってほしい。この「シリンダ内の気体」がどういう状態であるかは、温度、体積、圧力の3つで表現できるのです。そして、この温度、体積、圧力もまた状態量だといえるのです。それを裏付ける根拠は、気体の状態方程式だと思っています。状態方程式とは何か後述させていただきます。
■気体の状態方程式
状態方程式とは、状態量の間に成立する関係式のことです。先ほど、温度、体積、圧力もまた状態量だといいましたが、この気体の状態方程式を眺めてみても頷けることでしょう。例えば、気体の巨視的な状態は、下記のような状態方程式で規定されるのです。
P = f(n, V , T)…①
(P⇒圧力, V⇒体積 , T⇒温度 , n⇒気体の物質量)
ここで、理想気体の場合は高校化学で習ったと思いますが、気体定数Rを用いて
PV = nRT…②
nはシリンダ内で漏出しないので一定と考えます。この式が意味することは、状態1(V1,T1)から状態2(V2,T2)にどんな経路で移動させようとも圧力Pは決まってしまうし、V,Tについても同様のことが言えるという意味です。やはり、こういった関係式を眺めてみてもPやVやTって状態量だなって思いますよね。
■内部エネルギーは状態量か?
さて、ここで躓くことが多い。内部エネルギーは状態量ですと何の説明もなく議論されるからです。
結論からいうと状態量です。例えば、状態1(P1, V1)から他の状態2(P2, V2)を往復する経路を考えます。
経路1では、状態1⇒状態2と移動しましょう。経路2では、状態2⇒状態1と戻る場合を考えましょう。
それぞれの経路における内部エネルギー変化をI、Jとします。もし、内部エネルギーが状態量であれば、
I+J=0となるのはいうまでもありません。じゃあ、背理法的にそうならない場合を考えてみましょう。もし、内部エネルギーが状態量でなければ、|I|>|J|になるように経路を選べるのです。この場合、(P1, V1)から(P2, V2)へ行き、それからもとの状態(P1, V2)に戻って来たときにエネルギーがあがっています。たとえば断熱圧縮で外部から仕事を貰い体積がV1からV2に縮み、そのあと断熱膨張して外部に仕事をして、もとの状態(V2→V1)に戻るときに温度がもとより高くできるのです。でも、それって気体の状態方程式に明らかに矛盾してますし、無限に同じ操作を行えば系の内部エネルギーは果てしなく増加させられるのです。エネルギー保存則が崩壊してませんか?つまり、内部エネルギーは状態量だといえるでしょう。
■仕事と熱は状態量か?
熱力学の第一法則を思い出してください。ΔU = q + wとなりますよね。ここで、可逆過程の仕事の式としてw = -∫pdVだということを思い出してみてください。この式から考えても、仕事は状態量ではありません。では、qは状態量でしょうか?q = ΔU +wと変形すればわかると思いますが、状態量+状態量出ない量の足し算になっています。状態量+状態量は状態量ですが、状態量+状態量でない物理量は状態量ではありません。(よく考えてみれば当たり前のことです。考えてみてわからなかったら質問してください。)したがって、qもまた状態量なのです。
■熱力学の第一法則の微分形
熱力学の第一法則は、微分形にして下記のようにあらわすことがあります。
dU = d'q + d'w
dとd’の違いは状態量かそうでないかです。熱力学ではこういう表記をよく使うので覚えてください。
今日はここまで。
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