■エンタルピーについてさて、前回
状態量という概念を学び内部エネルギーUも状態量であることを論じた。そこで、下記のような物理量Hを考えてみる。
H = U + PV …①
当然、HはPとVだけで決まればUも一意的に決まるし、新しい物理量Hも状態量である。このHのことを熱学ではエンタルピーと呼ぶ。エンタルピーが一体何なのか。これについて解説する。
■エンタルピーの微分形エンタルピーを微分していくと下記のように変形できる。
dH = dU + PdV + VdP
dH = d'q + d'w + PdV + VdP
dH = d'q - PdV + PdV + VdP
dH = d'q + VdP …②
この式を見てわかるように、定圧のとき(dP = 0のとき)、
dH = d'q …③
となり熱量変化と一致することが確認できる。つまり、エンタルピーの変化量は
定圧条件に限って熱量と同じ意味をもつのです。また、この式から熱量は定圧条件の時に
状態量のようにふるまうという解釈もできるでしょう。
■エンタルピーの微分形(2)エンタルピーの全微分は偏微分を用いて次式のようにもあらわすことができる。
dH = (∂H/∂T)p dT + (∂H/∂P)t dP …④
定圧条件を考えるとdP = 0であり、下記のように変形できる。
dH = (∂H/∂T)p dT …⑤
⑤を③式に代入すると下記のような変形ができる。
d'q = (∂H/∂T)p dT
d'q/dT = (∂H/∂T)p …⑥
ここで1モルあたりの熱量をQとするとq = nQと変形できる。
これを6式に代入すると
nd'Q/dT = (∂H/∂T)p …⑦
のように変形できるので下記のように変形できる。
d'Q/dT =(1/n)* (∂H/∂T)p …⑧
この式が重要。dQ'/dTはモル比熱と呼ばれる物理量であり、圧力が一定の時は定圧モル比熱という。
定圧モル比熱は物理学ではCpであらわすことが多く、下記のような式であらわせる。
Cp = (1/n)* (∂H/∂T)p …⑨
このように、エンタルピーという状態量を定義すると、定圧環境下のいろいろな物性が評価できるため、熱学では重要な関数といえるのです。今後もエンタルピーはいろいろな式の中で姿を見せることでしょう。
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