皆様も経験的にしっていることでしょうが、温めたコーヒーが時間とともに冷えていくことはありますよね。では、その逆の現象が起こると思いますか。冷え切ったコーヒーが時間とともに温まっていくということです。皆様はやはり経験的にそれが起きないことをしっているでしょう。冷えたものが温まらない。この熱の不可逆的性質こそが熱力学の第二法則と呼ばれる基本原理です。これを学問的に厳密に表現した人がいます。それが、クラウジウス、トムソン、オストワルドらです。彼らは、こういった熱の不可逆性をどのように論じたのでしょうか?熱力学第二法則の導入として、今回はトムソンの原理とクラウジウスの原理、オストワルドの原理を解説します。
■トムソンの原理
物理学の教科書では次のように書いてあります。
一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に他に何の痕跡も残さないようにすることは出来ない。最初この意味がわかりませんでした。でも、この文中の以外を除くという意味ではなく、”だけではなくて”というニュアンスでとらえるとなんとなく意味がわかりました。具体的には下記の通りです。
「一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変えるだけでなく、他に何の痕跡も残さないようにすること」は出来ない。日本語って難しいですね。つまり、熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変えると何か痕跡が残るため、痕跡が残らないようにはできないという意味になります。
だったら最初から混乱しないように「 他に何も変化を残さずに、一定温度の熱源から熱を取り出して、それを全て仕事に変換することは不可能である。」 という主張を 『 トムソンの原理 』 であると記述してほしいです。
ここで新たな疑問が浮上します。痕跡を残せば熱源の熱はすべて仕事に変換できるのかということです。どうやら、熱を全て仕事にできないという単純な法則ではないからこういう日本語なのだろう。
例えば、気体の等温膨張を考えてみよう。この場合、熱力学の第一法則を考えると下記のようになる。
dU = d'q + d'w = 0
d'q = -d'w
どうやら等温膨張の場合は熱を全て仕事に変えられるではないか。しかし、この場合気体の内圧は減少し体積も膨張してしまう。どうやら、トムソンの原理で言及している議論は熱機関のサイクルを意識したものでしょう。内圧を減少させたり、体積膨張させずに熱を全て仕事に変えるのは無理ですよというのがトムソンの原理です。等温環境下で熱を加えたら膨張して仕事をするが、膨張しきったら膨張しておしまいなのです。状態を変えずに熱から仕事は取り出せません。これがトムソンの原理です。等温膨張と混同してはいけませんよ。
■クラウジウスの原理
物理学の教科書では次のように書いてあります。
低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す以外に、 他に何の痕跡も残さないようにすることは出来ない。同じように解釈すると、他に何も変化を残さずに、低温物体から高温物体へ熱を移すことは不可能であるという意味になります。クラウジウスの原理は経験的にわかりやすいかもしれません。低温熱源と高温熱源を置いておくと何もしなくても(何の状態も変えなくても)高温熱源に低温熱源から熱が移動できてしてしまう。しかし、そんなことは起こり得ないことなど皆さんもご存じでしょう。
■クラウジウスの原理とトムソンの原理の同等性
クラウジウスの原理とトムソンの原理は、実は全く同じなのです。クラウジウスの原理がなりたてば、トムソンの原理がなりたつし、トムソンの原理が成り立てばクラウジウスの原理もなりたちます。子の証明については、下記のサイトの説明にゆだねます。確認のほどよろしくお願いします。
参考1)http://homepage3.nifty.com/rikei-index01/neturiki/neturiki2nado.html
参考2)http://camellia.thyme.jp/files/html/thermo20130322/node56.html
■オストワルドの原理
これは非常にシンプルな原理です。第2種永久機関は存在しない。第二種永久機関とは、「一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に、 他に何の痕跡も残さないような機関」のことです。必然的にトムソンの原理が成り立てばオストワルドの原理もなりたつのです。第二種という表現から第一種はなんだという疑問が生じますよね。永久機関は昔の人のロマンでした。
第一種永久機関=無からエネルギーを生み出す熱機関
第二種永久機関=元の状態に戻りながら熱エネルギーを100%仕事にする熱機関
として、研究されてきたのですが第二種永久機関は存在しないのです。
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